Las caracol 2015秋冬号
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関東大震災と東京大空襲からの復興、めまぐるしいほどの商業的発展は町工場の存在が関わっていた。今は穏やかな街並である墨田区京島の移り変わりを「御菓子司 さがみ庵」は見守ってきた。大正13年に相模屋商店として始まったこの店は、地元の人々に長年愛されている。さがみ庵は昭和以前は近隣一帯の労働者にとって馴染み深い和菓子屋であった。しかし会社勤めの人が多くなる中、人々はスーパーで買い物をするようになった。専門店が競争に打ち勝つことは困難を極めた。そんな中でさがみ庵が見せた変化が新ジャンルの展開だった。餅菓子専門だったさがみ庵からどら焼きや練り切りを売り出したのだ。引き継ぎ当初は専門外だったこれらの和菓子も今は多くの人に支持されている。これは三代目ご主人の挑戦であった。主人が語ってくれたのは、店を継ぐというのは何かということ。移り変る街並みに対応することは困難である。京島という古き良き下町を守りたい地元住人の気持ちはとても深い。二度の厄災を乗り越えてきた文化は根強い。「古き良き」「昔懐かしい」そんな言葉が似合うこの街で「変わらず」に「代わる」ことがさがみ庵の昔と今を繋いでいるのだろう。    (取材/写真と文 宮下柊子)三代目ご主人 大石重信御菓子司 さがみ庵住所 東京都墨田区京島3-19-4TEL 03-3611-8185大正13年創業、相模屋商店(餅菓子店)として始まり、現在三代目が「さがみ庵」として営業。こだわりの手作りお菓子に遠方からの客も多く、第4日曜日の朝市びっくら市には列をなす。営業時間:朝10時~19時。定休日:水曜日、朝市終了後。墨田区東京23区「変わらず」に「代わる」さがみ庵の挑戦金魚という生き物は「神経質で、人間が無駄に手を加えてしまうと長生きしない」と吉田智子さんは教えてくれた。可哀想だからと思って水槽を綺麗に掃除したり、エサを食べる姿が可愛いからといって、必要以上にエサをあげてしまったり、過保護に育てることが実は金魚にとって良くない事なのである。水槽を掃除するときは、片側の面だけ綺麗にするだけで十分。愛情を込めて飼うことで、その分金魚は長生きをし、私たちに癒しをあたえてくれるのである。「現代の子供たちはネット社会に生きている。スマートフォンのアプリでゲームをしたり、サバイバルゲームに夢中になっている子供たちも多く、昔に比べると心が穏やかではない。そんな子供たちにメダカを見てもらい、一時でもいいから癒されてほしい」。そんな思いから吉田さんは、文京区にある23校の小学校にメダカを寄付した。しかし、この行動に反応があったのはたったの2校だけ。少し寂しそうな表情で語った吉田さんが印象的だった。問屋と併設して、金魚にあふれたレストラン金魚坂がある。「お店に来てくれるお客さんが金魚を好きになってくれることが嬉しい」。吉田さんはそう語った。 (取材/写真と文 土屋優海)吉田智子吉田飼料株式会社/ レストラン金魚坂住所 東京都文京区本郷5丁目3番15号TEL  03-3818-5185都営地下鉄丸の内線本郷三丁目駅から徒歩5分の所に問屋を構えて350年。16年前からは問屋と併設してレストラン「金魚坂」を開業。文京区東京23区忙しいからこそ癒しを求めて350年続く金魚専門店

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